引井総男の何か

読書、音楽、写真、散歩などの気ままな記録

2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

中江兆民とビゴー

風刺画集『トバエ』で有名なフランス人画家ビゴーと中江兆民は知己の間柄だった。 明治14年政変の翌年1882年に来日したビゴーは、海軍兵学校画学教師としての職を目当てに浮世絵の国日本にやって来た。幕末日本から欧米に流れ込んだジャポニズムに感化された…

ユキヤナギ

気ままな読書録1 エラスムス

中央公論社『世界の名著』シリーズ17巻、「エラスムス、トマス・モア」の「エラスムス」の方を読み終えた。一体いつから読んでいたか思い出せないほど時間がかかったのは、第一に読むのが遅い、第二に一つのことを1時間以上続けられない、第三に休みの日…

マルチン・ブーバーとグスタフ・ランダウアー

現代ドイツ史学者の三宅立氏の論文の注に2人の関係に関連する記述がある。論文本文では第1次大戦後ドイツの「中産階級左翼共同体主義の諸サークル」の一つとして研究者のランが挙げているのが、マルチン・ブーバーがベルリンで開いた「シオニスト社会主義者…

雨の興福寺五重塔

東大寺法華堂を下る道沿いで

ビートルズ(2)

ビートルズのディスコグラフィーを眺めていると、初期はジョンの存在が大きいと解る。リード・ボーカルを取っている曲数はジョンが最多、おそらく曲作りもレノン&マッカートニーとクレジットされてはいてもジョンがやっているらしく聞けるものが多い。ビー…

京都 建仁寺の庭

抹殺博士 重野安繹伝6 

大物学者 「久米事件」の責任を取るという名目で重野も帝国大学教授を辞職している。かの井上毅が文部大臣に就任した直後の出来事だった。世はまさに国粋思想の台頭期。頑是無い保守反動論者の騒動を治めるためには致し方ないという判断が、支配主流の下した…

加布里神社

抹殺博士 重野安繹伝5 

実証主義 歴史学における実証主義とは、伝聞や言い伝えではなく、飽くまで文献史料に基づいて、それも信憑性の高い史料に依拠して歴史を著わす態度を云う。重野安繹は政府の史料編纂所に所属して、次第にこの方法論に到達したのではなかったか。 何が彼をし…

抹殺博士 重野安繹伝4

趣味人 重野には義太夫節を唱う趣味があった。おそらく最初の江戸遊学時代に染まったのだろう。官製の史料編纂という仕事の傍らで義太夫も唸っていたのだから、悠々たるものである。 さらに猿楽の起源に関する研究も残している。今日からすると誤りも含む内…

抹殺博士 重野安繹伝3

知の優位 重野は薩摩閥として明治時代の政界内で一定の勢力を保ち得たとしても、だからといってそれを傘に威勢を揮ったわけではない。1870年代の重野の経歴は地味なものだ。 明治10年(1877年)の「西南の役」に際会して、西郷を知悉している重野が旧知の大…