2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧
しかし「文学界」知識人や京都学派の発言は、一見しただけではデマゴーグに見えないだけでなく、なぜそこから戦争肯定に繋がるのか判然としないものも多い。なんとなれば西欧のご当地でも「西洋の没落」が取り沙汰されていたのだから。特に京都学派の人文学…
1942年夏に物された論文と座談会を掲載したこの書物には、前年12月8日に開始された「太平洋戦争」緒戦の勝利の高揚感が色濃い。参加者皆が意気軒昂たる口吻を漏らしている中で、とりわけ溌剌たる発言をしているのが亀井勝一郎と林房雄である。 彼らには、「…
以上の経歴から判るように、道元は全生涯を仏教が語ることを考え、また周囲の人々に伝えることに費やした。他に混じるものがない、宗教者としてだけの人生を送ったと言える。 道元の言行は実際の人生行路と一致して超越論的である。仏の教えをただ祖述するの…
下巻末に校注者の一人、水野弥穂子(第1刷発行1972年当時、駒沢短大助教授)が「道元禅師の父、母、祖父」という章を書いてくれている。それによると父は久我通親(「こがのみちちか」と読む)、母は松殿関白基房の女(むすめ)で、生年は1200年丁度なのだ…
新聞の本の広告欄で紹介してあったので買って読んだ。医師松本良順の史伝である。読後まず抱いた感想は、吉村作品にしてはいかにも淡白だという期待はずれである。 同じ講談社文庫に吉村の『日本医家伝』というのがあって、それにも松本良順伝が載せられてい…
外交官アーネスト・サトウによる『神道論』は1870年代の成果である。横浜に本拠をおいた外国人によるアジア研究ソサエティでの講演や論文を集成したものだ。この組織に関しては萩原延寿『遠い崖』にも度々取り上げられていた。イギリス公使館の職員も数人が…
この国の有り様を決定づけた事件の一つとして、1881年の「政変」は大きな意味を持っている。この「政変」の真相に関しては今なお大久保利謙氏(大久保利通の孫)の著作の域を越えるものは現れていないものと思われる。大久保が論証しているのは、要するに黒…